sick from kenchikuchishiki 2001.3
*表題日付からも分かるとおり本頁内容は、正式にシックハウス法運用開始(07/01/2003)以前の動きを記したものです。
環境問題とシックハウス
[厚生労働省・国土交通省・経済産業省]
省庁の動きを読む
シックハウス総合対策
指針値策定、実態調査、汚染防止、新技術開発 ・・・省庁のシックハウス対策への意気込みはまだまだ熱い
 ’96年7月、学識経験者、関連団体、関係省庁(旧建設省・通産省・厚生省及び林野庁)からなる 「健康住宅研究会」が設置された。
 翌’97年6月に厚生省がホルムアルデヒドの室内濃度指針値を公表したことを受けて、同研究会がシックハウス (室内化学物質汚染)の低減対策を整理し、’98年4月に住宅生産者向けの『設計・施工ガイドライン』と、消費者向けの 『ユーザーズマニュアル』を発刊した。
  当時は室内汚染のメカニズムが未解明であったがその後の研究成果を活用し、集中的に調査検討を
  進めることを目的に、’00年6月、国土交通省主導による「室内空気対策研究会」 が新しく設置された。 当研究会は学識経験者、関連大体、関係省庁(国土交通省・厚生労働省・経済産業省・林野庁)から構成され、3カ年をめどに、大規模な実態調査の実施、 化学物質濃度の測定条件・測定方法の確立、住宅における室内空気汚染のメカニズムの調査、化学物質の放散を 低減する技術の確立などを検討し、ガイドラインを作成する(表1)。ここでは、注目すべき項目について、担当省別に紹介する。
(表1)
             担当省庁
 対策
厚生労働省 国土交通省 経済産業省
 健康基準値と
 測定法の基準



室内空気の汚染物質の濃度の健康基準の設定
室内濃度の測定方法の基準設定
簡易な測定方法の開発
簡易な測定方法の開発

室内濃度の測定方法の標準化
建材からの放散量の測定方法の標準化
 原因分析





室内化学物質の実態調査(A)
健康被害の実態調査
AとBの関係の研究
各種発生源の放射量などの調査
換気などの住まい方との関係調査
ダニ、カビなどほかのアレルゲン調査

室内化学物質の実態調査
換気方法などの住まい方との関係調査
 
 汚染防止対策


健康住宅への優遇融資
建築物衛生管理法の衛生基準など
健康住宅ガイドライン



建築基準法の基準(建材換気設備など)
住宅品質確保方の住宅性能表示
設計施工ガイドラインなど(建材・設備の選択など)



建築基準法の基準(建材換気設備など)
住宅品質確保方の住宅性能表示
設計施工ガイドラインなど(建材・設備の選択など)
 汚染住宅の改善  



空気清浄器、吸着剤、換気設備、ベイクアウトなどの各種低減方策の開発支援、評価、普及
紛争処理など
 
 相談体制整備



保健所、地方衛生研究所
相談マニュアルの作成
測定機器整備、測定サービス
各種相談体制のネットワーク化





都道府県住宅センター、PLセンター、住宅リフォーム・紛争処理支援センターなど
相談マニュアルの作成、研修会の実施
測定機器整備、測定サービス
 
 被害者対策



専門医療機関のネットワーク化
症例の集積
診断治療体制の整備
重傷者の緊急避難や転地療養
   
kosei 
厚生労働省   http://www.mhlw.go.jp/
  シックハウスへの取り組みは、’95年3月に開始した厚生省主催の「快適で健康的な住宅に関する検討会議」に始まり、この検討結果は、 ’99年2月発刊の「快適で健康的な住宅に関するガイドライン」に記されている。
 ’00年4月、新たに「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」が設置され、現在までに計5回の検討会が開かれた。 同省における今後の主な取組みは以下の4点である。
(1) 指針値の策定及び測定方法の基準設定
(2) 汚染の実態調査
(3) 相談体制の整備
(4) 疫学調査・医療研究
    指針値は最終的に何種類に?
  ’00年6月および12月、VOCの室内濃度指針値に新たな物質が追加され、現在はホルムアルデヒド、ヒドドトルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、 エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチルの8物質が発表済みだ(表2.3)
新たに指針値策定の予定とされたのは、テトラデカン、ノナナール、フタル酸ジ-n-エチルヘキシル、ダイアジノンである(表4)。
果たして、今後は一体何種類ぐらいの指針値がでてくるのだろうか?厚労省によると、「年間で8〜10物質を策定し、これを5〜6年間は続ける」。つまり最終的には、 50種類前後となる見込みだ。
    TVOCの暫定目標値
  新規策定対象物質と同時に、TVOCの暫定目標値(400μg/m3)も発表された。これには個別VOC指針値を補足する意味があり、 国内での実態調査結果に基づく、「暫定値」とされる。現時点では、個別VOC指針値とTVOC暫定目標値は、独立して取り扱われるが、 将来的にリスク評価に基づくTVOC指針値が設定された場合には、個別VOC濃度とTVOC濃度の双方がそれぞれの指針値を満たしていないと、 その空気室が安全とはいえなくなる。
    測定方法の基準設定

  ’00年6月、ホルムアルデヒドとVOCの標準的な採取・分析法が策定された。 しかし、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチルなどの測定基準は、 最終案がまとまり次第発表される。
簡易方を含む測定機器については、(財)ビル管理教育センター(*1)で行ったアンケートに基づく目録が、 厚労省および同センターのホームページ上で公開される見通し。
    相談体制整備と疫学・医療研究
  保健所などを中心として測定・相談サービス体制に向けたマニュアルの作成、専門職員の育成なども課題だ。また、   ’00年度から3カ年計画で、シックハウスの原因究明と医療整備に向け、調査研究を進めている。
  (表2)
厚生省が発表した室内濃度指針
 揮発性有機化合物 室内濃度指針値
 ホルムアルデヒド
  トルエン
 キシレン
 パラジクロロベンゼン
100μg/m3(0.08ppm)
260μg/m3(0.07ppm)
870μg/m3(0.20ppm)
240μg/m3(0.04ppm)

(表3)
新しく発表された室内濃度指針値
 揮発性有機化合物 室内濃度指針値
 エチルベンゼン
 スチレン
 クロルピリホス
 
  
 フタル酸ジ-n-ブチル
3,800μg/m3(0.88ppm)
    220μg/m3(0.05ppm)
         1μg/m3(0.07ppb)
   ただし小児の場合は
    0.1μg/m3(0.007ppb)
    220μg/m3(0.02ppm)
 TVOC(暫定目標値)  

(表4)
次回指針値策定予定物質
 揮発性有機化合物 主な発生源
 テトラデカン   有機溶剤
 ノナナール   有機溶剤
 フタル酸ジ-n-エチルヘキシン   可塑剤塗料
 ダイアジノン  有機リン系殺虫剤
注) これらの指針値は検討会を経てパブリックコメントを募集し
  た後、最終案がまとめられる。’01年6月頃の発表が予定さ
  れている。


*1(財)ビル管理教育センターホームページ
http://www.bmec.or.jp/
kokudo 
国土交通省      http://www.mlit.go.jp/   経済産業省   http://www.meti.go.jp/
   化学物質による健康影響と特定できる統計はないが、 住宅リフォーム・処理紛争支援センターで受け付けた室内環境問題に関する相談件数は、’96年度68件、’97年度90件、’98年度170件、 ’99年度203件と増大する一方で、早急な改善対策が必要だ。
  厚労省のVOC指針値策定を受け、(社)日本シロアリ対策協会に対し、 有機リン系防蟻剤であるクロルピリホスの使用自粛措置の養成を行い、同協会はこれを受理し、段階的自粛を決定している。
  同省における今後の主な取組は以下の6点である。
(1) 住宅の汚染の実態調査と居住者の健康状態の把握
(2) 化学物質濃度の測定条件および測定方法の確立
(3) 汚染メカニズムの解明
(4) 化学物質の放散を低減する改修技術の確立。
リフォームに適した要素技術(診断、吸着・除去、改修・換気)の情報集約と検証
(5) 設計・施工および居住のためのガイドライン
(6) 化学物質濃度情報の開示方法の確立
    建築基準法が変わる?
   ’00年7月、品確法において、合板などホルムアルデヒドの放散量に係る規格のある建材の使用等級を表示するなど、室内空気環境に関連する表示方法を定め、 同年10月より運用が始まった。  ただし、現行の表示対象が一部の建材にとどまることから、今後表示・評価基準が見直される可能性が高い。
  また、建築基準法においても室内の化学物質の影響に配慮した建材、換気設備などの基準のあり方について、法律ないしは告示の改正もあり得るという。
    住宅金融公庫による割増融資
  室内空気汚染の予防の基本は適切な換気である。そこで公庫では’00年10月から適切な換気を行う室内環境に配慮した住宅の建設を支援するために、 換気設備を設置する住宅に対し、50万円/戸の割増融資制度を設けた。
    繊維板、パーティクルボード、壁紙、 壁紙施工用でんぷん系接着剤についてホルムアルデヒド放出量測定法法(デシケータ法(*2))およびその放出量の性能値(E0など)がJIS規格において規定されている(表5)。
  更に’00年1月、(社)日本建材産業協会においてはJIS規格外品、輸入品などの建材を対象にホルムアルデヒド放出量を認定し、 その性能値のマーク貼付を認める「建材表示制度・空気環境性能表示」を創設している。また、家具・塗料の各業界において、VOCに係る対策指針などを策定している。
  同省における今後の主な取組は以下の3点である。
(1) 建材から放散されるVOCの新測定法「チャンバー法(*3)」のJIS規格化
(2) ISO規格と整合性のある屋内空気中の汚染物質濃度測定法のJIS規格化
(3) 新しい機能を持つ建材の開発
     測定可能な範囲を拡大
  従来はデシケータ法により建材からのホルムアルデヒドの放出量性能値を規定していたが、より多様な建材や化学物質の測定が行えるチャンバー法への移行を検討している。
  ’01年度末を目標に、塗料、接着剤、断熱材、建具などにも適用でき、 ホルムアルデヒドおよびVOC全般に対応可能なチャンバー法のJIS規格原案作成を行う。
     室内汚染物質の濃度測定法法
  室内空気中の汚染物質濃度測定法法について、
   ’01年度末をめどにISO規格と整合性のあるJIS原案を作成する予定。
    技術開発の推進
  技術開発プロジェクトなどを通じて、住宅での空気室の標準的なサンプリング方法の確立(厚労省の「測定法法」などにその成果を反映)、 低ホルムアルデヒド対策などを施した内装材、空気清浄器などの開発を実施した。
  また、ホルムアルデヒドおよびVOCの吸脱着・分解による自然換気機能を有し、リサイクル可能な内装下地材の開発も進行中だ。
  さらに、建築廃材・ガラスなどリサイクル技術開発において、ホルムアルデヒドおよびVOCを放出せず、 かつ原料として建築解体木材を用いた木質ボードの製造技術の研究開発なども行っている。


*2 デシケータ法:デシケータ(ガラス製の容器)内に一定量の資料
    を24時間放置した際、デシケータ内の蒸留水に吸収 されたホル
    ムアルデヒドの濃度を測定する方法
*3 チャンバー法:チャンバー(ステンレス製の容器)内に一定量の
    試料を放置した際、チャンバー内の気中に存在する化学物質の
    濃度を測定する方法

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