ふなこし・たかし  1931年、福岡県宮田町生まれ。60年、俳優座からTNCテレビ西日本にディレクターとして入社し、65年にドキュメンタリー「ハブ」で民間放送連盟賞銅賞を受けた。現在は同社の関連会社ビデオステーションキューのプロデューサーとして衛星放送の番組を手がける。98年から博多座のプロデューサーを兼務する。
「金子みすゞ物語」公演の問い合わせは博多座=092-(263)-5555

 薄幸の詩人金子みすゞをモデルにした「金子みすゞ物語」が十二月十九、二十日に博多座(福岡市博多区下川端町)で上演される。 博多座が始めて自主制作するオリジナル劇で、出演者をはじめスタッフの大半が九州在住者という「九州産」の舞台だ。 果たして博多座の大舞台に見合うレベルの公演となるのか、興行的に採算は取れるのか。博多座プロデューサーの舟越節さんに、手ごたえと課題を聞いた。 
(文化部・塩田芳久)

−初めてオール九州のスタッフで作る作品。期待と不安が半ばするのではないか。
「不安はありますが、それ以上にいい作品になる手ごたえはあります。オーディションで選んだ役者は、地元の劇団で鍛われており力はあります。九州の演劇のレベルは高いと実感しながら、日々けいこに励んでいます」
「『金子みすゞ』というテーマも、博多座がオープンする前から温めていたもの。みすゞが山口県長門市の出身であり、優しい詩の世界が今、 話題を集めていることを考えると、多くの方々から支持していただけるのでは、と期待しています」
−公演は二日間で三回だけ。すべて満席となっても採算が取れないのではないか。
「制作費は約二千五百万円。たぶんペイできないでしょうね。入場料を歌舞伎など他の演目と同程度に設定することはできませんから。採算ベースに乗せるため、 他の劇場で上演していただくのも一つの手段ですが、諸費用合わせて一舞台三百五十万円ほどかかります。引き合いはあるものの、果たして買っていただけるかどうか・・・」
「もっとも、今回の舞台は地元の演劇関係者の教育の場、と当初から割り切ってはいます。 博多座の役割は中央でしか見られないような作品を呼んで来ること、舞台を発表の場として市民に開放すること、培ったものを市民や劇団に還元することだと考え、実践してきました。今回は市民と手を携えて一つの作品を作り上げるという、『第四』の役割のテストケースだと受け止めています」
−公演が成功すれば、今後継続して博多座オリジナル作品が制作できるのか。
「今回は、そのための試金石です。完成度の高い舞台をつくり、一人でも多くの方に見ていただくのが第一だと考えます。この試みが軌道に乗れば、地元の演劇関係者に力がついてくる。 地方の演劇という『井の中のかわず』ではなく、中央とそん色のないレベルに達することもできるでしょう。そうすれば、一カ月に渡るロングランの芝居でも、東京から全部連れてくるのではなくて、地元のスタッフと組んで一つの舞台を作り上げることもできるのではないでしょうか。ぜひ、博多座発の作品を問い続けたいですね」