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“禁煙”未だ緩やかなりし頃、下の如き「御託」も聞く耳もつ輩がいたのだろう。
現在(2019年5月)に到る途上の煙草中毒者の論調を見てみるてみることに。
そのあとには、“クールビズ”などおかしな物まで登場したが、夏の服装について今となっては陳腐な昔話も。

実は上の岩見より下の筒井の文を先にアップしていたのだ。
  千代田区で、いよいよ歩行中の喫煙取締りが始まった。愚挙と言うべきであろう。
  まあ、あんな排気ガスの立ちこめる通りをふらふら歩くなんてことはわしはやらないし、せいぜいホテルや劇場へ行った際のタクシーの乗り降りでしか歩かないのだから関係はないのだが、許せないのは区の役人が実施に当って「そういう時代になってきたのですから」などとほざいていることである。
  どんな時代になってきたというのだ。排気ガス渦巻く中での喫煙に目くじら立てるなどは材木と爪楊子を見間違うていのすかたんであり、人間がコトの大小を分別できなくなって馬鹿になってきた時代ということなのか。
  確かにマスコミが俗耳に入りやすい些末事ばかりを報道し、その背後の大事を扱わなくなって久しいが、区役所もまた未解決の厄介な間題から都民の眼をそらせようとしての些事へのこだわりなのであろう。 今さら、禁酒法という愚挙を煙草でヒステリックにくり返そうとしているアメリカの真似をしてどうするのだ。聞けばニューヨークでは路上喫煙歩行者に対して、周囲から罵声が飛んでくるというではないか。アメリカのヒステリーもついにここまで来たかと感嘆する。
  喫煙の煙をヒステリックに嫌うのはもちろんご婦人方であるが、屋内ではなくて路上である。直接顔に吹きかけられでもしない限り健廉にかかわるほどの被害とはなり得ない。これは前にも書いたことだが例の屋内における副流煙にしたって、肺癌の直接の原因でないことは判明している。婦人の肺癌の多くは腺癌だが、これはニコチンと無関係の癌なのだ。
  たしかに喫煙者であるわしでも腹を立てるほど喫煙作法の悪いやつというのは存在する。これ見よがしに吸殻をポイとはじいて捨てるやつがいるが、あれは西部劇などでよくやるやつで、
昔は格好いいとされたものである。
  わしは携帯灰皿を持ち歩いているのだが歩行喫煙者を見かけたら、 まず携帯灰皿を持っているかどうかを確かめ、持っていないやつからのみ罰金を取るぐらいの大らかさが取締りにはあっていいのではないか。 煙草を人さし指と中指の間に挟んで、手を振って歩く馬鹿もいる。原宿では、主に女性である。これがすれ違う人の手にあたれば火傷をする。 人混みの中でこれをやられてはたまらぬ。
  わしは原宿など人通りの多いところで喫煙しながら歩く場合、煙草の根もと即ち吸い口の部分を親指と人さし指でつまんで持ち、 火のついた部分を掌の中へくるみこむようにして歩くことにしている。 これはかの名作「デッド・エンド」でやくざに扮したハンフリー・ポガートがやっていたことであり、 いささか上品さには欠けるがなかなか恰好良く、わしなど昔から、嫌煙権などと誰も言わなかった四十年前から実行している。
  ところでこの取締りをどういう具合に実施しておるかというと、これがまた噴飯ものであって、パトロールの区職員と警備員がひと組で巡回し、 笑顔で歩行喫煙者に注意してくれるというのである。最初に言うのが「これこれ、こういう条例があるのをご存じですか」であり、ナマぬるいにも程がある。
  やるなら徹底してやるべきであって、相手の行手に立ちふさがってもいけない、肩や手など相手のからだにさわってもいけないとあっては、 そのまま行ってしまわれるのがオチであろう。やらない方がましというものだ。やらされる職員もとんだ災難で、そんな職務では給料を貰うのさえうしろめたい筈である。 これがどれだけ効果のない取締りであるかを区役所に思い知らせるには、二人ひと組の職員と警備員には気の毒であるが、わしの考えた方法というのをまず、お聞きいただきたい。

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  わしはしばしばテレビ・ドラマでやくざの組長、香港マフィァのボスといった役をやらされるのだが、この時わしの子分になる役者たちには、実際のやくざやギャングそこのけの、 実に物凄い風貌をしたのがいっぱいいる。共演していて小便をチビリそうになるほど怖いこともあるのだが(あっちにしてみれば、 わしを結構怖がっておるらしいが)この連中を集めてきてそれらしい扮装をさせ、煙草を吸いながら千代田区の路上を集団で歩かせるのだ。 まあこの連中に注意をする職員や警備員がいたとしたら、とんでもない命知らずということになるが、実際には見て見ぬふりをするであろうことくらい、目に見えている。 わしが日当を払ってでも一度やらせてみる価値はあると思うがいかがであろう。 毎日新聞編集部の戸嶋誠司氏はわしの書いた短篇「最後の喫煙者」を紹介してから、 この条例の実施を「笑顔のファシズム」と論評している。その通りであり、たとえ笑顔であろうと条例である以上は公権力の介入であって、 喫煙者のマナーが悪いというだけで行使するべきものではない。マナー違反は注意して本人の自覚を促すだけでよいのだが、 それをやる度胸がないので条例違反という公権力を作ったのである。 だいたい喫煙者のマナーによる迷惑と、泥酔者による迷惑のどちらが大きいかといえば、 これは比較にならぬほど泥酔者による迷惑の方が大きい。同じような迷惑防止条例で取締 られてはたまったものではない。 さて、煙草は人間を情緒的にする素晴らしい発見であった。ヒステリックな嫌煙者は一 度煙草をおたしなみあれ。少しは和やかな気分になり、 こんな条例が愚挙であることに気づかれるであろう。このヒステリックな条例がニコチン不足によるものであることは、 過去に喫煙経験があって禁煙した者ほどヒステリックになるという事例が証明している。
狂犬樓の逆襲 筒井康隆   −噂の真相 2002年12月号−

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下は 2007年12月にスキャンしているが出処不明。Wiki に拠るとイタキチ(イタリア贔屓)の落合正勝は 2006.8.6 没とあるので、 大分以前のスクラップを引っ張り出したらしい。
今(2019年5月)はもうこんなことをいう日本人は存在しないだろう。文末に「一年中暑い国は別として」とあるが、日本の夏の湿度を前にバカげてる。

− 荒牧 千e Aramaki Kazuhide −
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