「シェーン」といえば、 壮絶な決闘場面とともに、 ラストシーンでジョーイ少年が叫ぶ「シェーン、カムバック!!」でおなじみの西部劇の最高傑作だが、最近、映画評論家の白井佳夫氏が、ユニークな新解釈を打ち出している。
「実は、シェーンは決闘で相手に撃たれて重傷を負い、ラストシーンでシェーンが死ぬことを暗示している」というのである。
この説自体は白井氏の独創ではなく、以前から映画ファンの間でささやかれており、白井氏も友人の脚本家、倉本聡氏から聞いた。
驚いて、58年夏、「シェーン」のビデオが発売されたのを機に、改めて場面をストップしたり、スローモーションで検討した結果、 映画では見逃していた事実がわかった。
問題の決闘場面とは、シェーンが酒場でジャック・ |
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パランス扮する殺し屋と、 牧畜業者のライカー兄弟の兄を続けざまに倒した後のシーン。
映画では、 背後の二階に隠れていたライカー弟を、振り向きざま一瞬早く撃ち殺すように見えるが、ビデオを止めると意外な結果が分かる。
写真左を見て欲しい。シェーンの頭上の白い雲は、ライカーのライフルの硝煙だ。シェーンはまだ銃を抜く途中で、 ライカーの方が一瞬早い。二人の距離は5、6b。ライフルの弾がはずれることは考えられず、この瞬間に撃たれたと思って間違いなさそうだ。
写真右は、その次のカット、シェーンが頭上の敵を撃つ場面だが、ここで本誌は白井氏も指摘していない新事実に気付いた。 シェーンの銃口の硝煙の方向を見ると、右側に撃っている。つまり、頭上のライカーには当たっていないのである。 |
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ま、これはご愛敬で済ませられるシー ンであり、 ともかく白井氏は、「この決闘でシェーンが左肩の、それも心臓に近い部分を撃たれたのは確かです。
というのは、この後でジョーイ少年が『血が出てる。 けがをしたんだね』という場面が出て来るんです」という。もっとも、血そのものは画面に出てこないし、シェーンも「大丈夫だ」というように左手で少年の頭をなでて見せたりする。
だが、「ラストシーンを子細に見ると、シェーンの左手がだらりと下がり、深手を負った様子がよくわかる。 おまけにシェーンが向かって行く先は、画面を止めてみると、十字架の並んだ墓地なんです」
白井氏は、「シェーン」は、もう荒くれ牧畜業者やシェーンを含めたガンマンの時代は終わった、 彼らは死に行く者として描かれた映画だ、と解説しているのである。 |