朝日新聞掲載

住まいの相談  住宅の設計・監理はどこに依頼 ・・・・・・ 独立した建築士に

  住宅の新築を計画しています。 設計と工事監理は建築士に頼んだ方がよいと訊いていますが、ある業者に相談したところ「当社には一級建築士がいて、設計や監理も一緒にして上げます。 請負代金だけで結構です。設計料はサービスさせていただきます」と、勧められました。
  はたしてどうしたものか、と迷っています。
             (京都府・K)
 
  住宅の注文でトラブルを起こすもととなるのは、 消費者が注文に当たって 描いていたイメージと、実際の出来上がりとのズレです。契約時に設計図や仕様書(見積明細書)が整っていても建築に明るくない 消費者にとっては、はたして自分の意向が十分に盛り込まれているのか分からず、出来上がり結果についても、はたして注文通りなのかどうか、 分かりかねるのが通常です。
 このような点を専門的な立場でアドバイスしてくれ、消費者の意向に沿って設計し、見積の当否を確かめ、 施工が注文通りかの工事監理をするのが、建築士法に定められた建築士の役割です。施工業者にも建築士が雇用されていて、 設計や工事監理に当たっているところも多くあります。建築士であるからには、消費者の知識不足を補い、 同じように設計監理に当たらねばならないことはこの建築士法の定めから本来当然のことなのです。
 しかし実際には、雇用されている建築士が業者の意向に反してまでも消費者サイドに徹することは難しく、 トラブルや欠陥を生んでいる事例が多く見られます。矢張り業者には雇用されていない、設計監理専業の建築士に充分あなたの意向を告げて、 設計監理を依頼されるのがベターだと思います。ただ、この場合でも建築士の選択が大切です。業者との癒着がなく、 職能意識の強い人を選ぶべきです。実際に依頼するまでに幾度も相談してみてその人柄を確かめておくことです。
 設計料の件ですが、業者とて建築士を雇用している以上、全く無料で設計監理が出来るものではありません。 ただ設計料という費用項目が契約上明記されていないだけで、その分は工事代金中に上乗せされていると考えるべきものでしょう。 業者とて正当な利潤なしには企業の維持は出来ないからです。むしろ建築士に適正な見積を査定してもらえば、 設計料分ぐらいは浮くことになると思われます。そして欠陥やトラブルのない意向通りの家が出来上がれば、 結局は安くついたことになるのではないでしょうか。
 (欠陥住宅を正す会代表幹事 沢田和也)

*業者に属さない建築士が、スタンダードとなる図面を作成すれば、 複数の業者から見積を徴集することが可能となり、 業者間の価格競争も望め、これにより設計料分の回収以上の益を建築主にもたらすことになるでしょう。
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低価格商品の裏側

  建築設計事務所で住宅設計を手がけている人々にとって、 住宅メーカーの価格は驚異に映るようだ。
  値決めの方法についてエス・バイ・エル東部住宅事業本部設計部長は、価格は開発段階から決まっており、その範囲で必要経費を割り当てる」と話す。
  その分各所への締め付けも厳しいはずだ。設計料という区分がないうえ本体価格の明記もない、このブラックボックスの内側を知る手がかりを少しだけ探ってみた。

    短い設計期間

  坪38万円からの普及型商品「ハウス55」を主力とするエス・バイ・エルは、 住宅メーカーのなかでもCADを1882年に導入するなど、比較的設計の省力化が進んでいるメーカーだ。 最初の図面は手作業とコンピュータの半々で作成するが、その後は95%CADによる。CADの入力は大阪本社にいるオペレータがすべて行う。オペレータの作業時間は、1物件当たり必要な平面と立面図4〜7枚で60分、 最も手間がかかる施工図10枚で3〜4時間。契約から着工までに要する時間は3ヶ月がめどである。一生の家を建てるという実感を味わっている暇など、 設計担当者にはなさそうだ。

    工賃は一般の6〜7割

  「できれば住宅メーカーの仕事はやりたくないね。工賃を比較
 

すると、一般工事の6割、良くても7割だもの。
  でも、安定収入のために増やさざるをいない」と、 ある大手住宅メーカーの工事を請け負う工務店オーナーは語る。特に昨年秋頃から工期短縮と品質管理に対する指導が厳しくなり、「非常にやりづらくなった」と漏らす。 メーカーの懐事情から工賃を下げる要求はないかとの問いには、「バブル崩壊の前も後も工賃には変わりがない。製品ごとの違いもないので、 普及型みたいな簡易な施工ができる方がラク」との答えが返ってきた。

    設備機器メーカーには厳しい要求

  最近の新商品では5社にキッチンユニットを納品したというクリナップ。営業本部直需部ハウス営業課長はその際、 従来製品の10%以上価格を下げつつも、品質は落とさないように」との条件を出された。 そのため「引出の数を減らしたり、スライドラックを3段から2段にしたり....」と苦労話を披露する。
  さすがにロットで仕入れるから大幅に価格を下げろ、 という強引な取引は最近ではないらしいが、「プライスリーダーは先方である」。住宅メーカーの開発担当者によると、オリジナル建具を注文する場合、 工務店が同様のものを単品で依頼した場合の半分以下の価格で取り引きできているという。
episode
      日経アーキテクチュア 1998/9/13 ▲ページトップへ
設計監理と設計施工との違い     bunri
 建築をするとき、設計図書によって見積りし、 金額について建築主との合意を得て工事契約を交わし、着工し、設計図書に基づいて工事が進められ、設計監理者の現場指示得て完工されるのが今日的な工事のやり方です。
  この設計図書を作ることから工事の完成まですべて一括して注文を受け、一社で何から何までやる方法を設計施工一括請負と呼び、 設計監理を設計事務所が別に行う方式と区別しています。設計事務所がいないのですから、自社で設計したうえで監理事務を代行するため、 設計・施工・監理の三役を一社で引き受けることになります。これは施工会社にとっていろいろとメリットのあるところから、この方式を希望する業者が多いのは事実です。
  自社の一貫作品としての存在感が強調できる。予算に見合った、利益を考慮した設計にできる。 設計事務所など第三者によるチェックや技術的な介入がないので、 自社のペースで思い通りに工事が進められる。同業者との競争を避けることができる。以上のように有利な条件がそろっています。施主の希望や意見を除けば、 すべて自分に裁量権があるわけですから、うま味の多いのは事実です。
  これに対して、設計監理者と施工者が別々のときは設計と施工の分離発注と呼んでいます。設計事務所は、施主の要求や希望を専門
  的に整理した設計の条件に基づいて基本計画から実施設計まで行います。設計監理も、設計施工も、計画段階はほぼ同じですが、 設計図の枚数や内容にはかなりの差があります。
  もちろん、設計施工分離発注方式の設計事務所の図面枚数が多く、内容の詳しい度合いが高いのは当然です。その設計図や仕様書によって、 施工業者一社ないし数社から見積を徴集して査定し、適当な業者に発注します。設計者は施主の代行で、第三者的な立場でありながら、 いつも施主側の立場に立って事を進めていきます。
  設計者の立場について、施主の技術代行者という言葉が再三出てきます。 施主が建築に対して全く素人のときも、そうでないときでも、建設業界の習慣や癖、 技術的な細部のことや現場での専門的な知識の奥深いところまでを知り尽くすのはとうてい無理なことなのです。設計と監理を専門にするプロと互角というわけにはいきません。 生兵法は大けがのもと」の諺どおりの結果を招いている例が数えきれないほどあります。建設業者の営業はその道のプロ、施主の生半可な知識を褒めあげ、 褒めそやして自家薬籠中のものとして、自社に有利な仕事の進め方をする例も多く見聞きします。
  このような事柄にとらわれず、 いつも醒めた頭と眼をもって全体を眺め、施主にとって
何がここで必要か、 有利かを冷静に見つめて判断し決断していくのがプロのプロたるゆえんです。
  したがって施主は、 細部については設計中や設計前での打合せと出来上がっていく途中での感覚的な相違のある意思伝達に気がついたときには、すぐ設計者にそのことを伝え、 変更などを行うこともときには必要です。
  もちろんそのためにどうしても必要な費用の負担はしていただきたいと第三者的立場で言いますが、 設計施工のときの、そうした場合の負担よりはるかに少ないもので済むはずです。それは材料の入荷や、職人の仕事の進捗状況までも正しく把握しているその上に、 どうしたら建設会社にも、施主にも損や手戻りの発生などが少なくて済ませられるかを真剣に考えているからです。
    建設会社にも損をさせないと言ったことを、 施主に損をさせないと言いながら建設会社の味方もして....、と言われたことがありましたが、建設会社に損をさせれば、 後の他の仕事に徐々に影響が出てくるおそれがあるからです。建設会社は営利を目的としています。設計施工を希望するのはその目的が達しやすいからです。建設会社はよく設計図どおりやりますから設計事務所の監理を外してください、とよく言います。それを鵜呑みにしたら、どういう結果になるかを何度も書きましたので賢明なる施主のあなたはよくおわかりと思います。結果選択するものは設計施工の分離発注にしようとすぐ決められると確信します。
 なぜなら、それが一番施主にとって得であり、理想とする形だからです。
From [設計事務所まるごと活用法] 学芸出版社刊 ▲ページトップへ
コンピュータ設計に心はない     comp
近年、コンピュータがめざましい勢いであらゆる部門で使用され、 日進月歩でその能力が開発されています。建築の世界も、いつの間にかコンピュータ時代になっています。近頃では、ごく当たり前のように建っている超高層ビルも、 コンピュータの開発がなかったら地震国の日本でこんなに急激には増えなかったでしょう。しかしその使われている状況は、あまり一般の人の目には触れていないので、 ピンとこないだけなのです。
  近頃、プレファブ住宅の広告などで、わが社は、コンピュータを駆使して、 皆様の設計をさせていただきます」と言っているのをご覧になったことがあるでしょう。本当にコンピュータで設計ができると思われますか?
  現在ではこれも可能なのです。今よりもっとコンピュータの性能が良くなれば、相当な部分まで設計ができるはずです。 間取りもコンピュータに適合した平面が得られ、それに伴う立面、構造部材などが機械的に決まり、自動製図器が目にも止まらぬ早さで図面を書き上げます。 現在、これぐらいのところまで来ています。
  近い将来建築家は皆失業し、設計事務所には、 コンピュータだけが据えられる時代が来るのか?と言うと、こないだろうと思います。
  コンピュータは機械、 どんなに精度が高くなっても「人間の心」が開発できないだろうと思うからです。建築は技術のなかでも、最も人間に密着している技術です。 この頃でこそ住宅を例にとると誕生や死は、病院で迎えることが多くなりましたが、そんな生死から冠婚葬祭まで、 人間生活の喜怒哀楽がすべて行われ人生のすべてが包まれる最も人間的な空間なのです。
  魚釣りは鮒に始まり鮒に終わるといわれます。建築の設計も、 住宅に始まり、住宅に終わるといわれるほど、建築家にとって最も難しい建物なのです。それは人間を愛する、最も人間的な心を持っていなければ、 本当に安らぎを感じさせるような住宅はできないからです。
  コンピュータには、技術を代用させられても、いくら進歩したとしても、 人間の心や感情を求めることは難しいでしょう。
    From [設計事務所まるごと活用法] 学芸出版社刊 ▲ページトップへ
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